- 名 称
- 日本デザイン学会奨励賞第3支部
- 目 的
- 表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
- 対 象
- 日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
- 人 数
- 学部枠2名・大学院前期課程(修士)枠2名、大学院後期課程(博士)枠2名/各所属機関
受賞者:
(順不同)
名古屋学芸大学
- シリーズ商品における『統一感』の形成
- 浅野 真央(メディア造形学部 デザイン学科 プロダクトデザイン領域)
推薦者:黄ロビン - 本研究では、無印良品、ニトリ、IKEA、OXO、Refa、サマンサタバサ、ミッキーシリーズ、+d、星野リゾート、「あつまれどうぶつの森」のシリーズ家具、計10シリーズを調査対象とした。企業のコンセプトに基づき、形・素材など商品の特徴を抽出してから、「単純ー複雑」と「素朴ー派手」の軸にマッピング。先行文献は生活用品などに絞った研究が数多くあったが、本研究では食品や空間、ゲームまで幅広く考察した。
- ボードゲームについての基礎的考察
- 鈴井 葉月(メディア造形学部 デザイン学科 プロダクトデザイン領域)
推薦者:黄ロビン - 本研究では、まずボードゲームの歴史を調査して、メカニクスによって多量のボードゲーム形態を20類型に分類し、コンポーネント(ボードゲームを構成する内容物)を4種類と定義する。10種類のボードゲームを抽出して、事例研究を行った。その後、事例を類型化してマッピングし、多視点から深掘りして考察した。この考察に基づいて新たなボードゲームを3案を提案する。
- 実写映像の再構築によるアニメーション表現の探求
- 石川 真衣(メディア造形研究科 メディア造形専攻)
推薦者:黄ロビン - 本研究は、実写映像を基に多様な手法を駆使し、新たなアニメーション表現の可能性を探求するものである。実写映像を加工・操作する中で生じる偶発的な要素〈あそび〉に着目し、実写映像と抽象的なイメージの狭間から豊かな表現を生み出している。さらに、独自のロトスコープや様々なアナログ技法を取り入れることで、映像表現の可能性を追求している点が評価に値する。(文責:齋藤正和 )
- SNSユーザー自動育成プログラム
- 林 亮太(メディア造形研究科 メディア造形専攻)
推薦者:黄ロビン - スマートフォンをPCから制御し、SNS(TikTok)のレコメンド・アルゴリズムにより推奨される動画に対してリアルタイムで色分析を行い、特定色の面積により〈いいね〉をタップするかスワイプするかを判断するシステムを開発した。それを展覧会場で稼働させ、赤・緑・青好きのアカウントが徐々に育成されて行く様を展示した。今日、世界的に問題となっているSNSの挙動を浮かび上がらせるユニークな試みであった。(文責:佐近田展康)
金城学院大学
- 廃棄花を利用した壁装材の開発
- 光野 るな(生活環境学部 環境デザイン学科 空間デザインコース)
推薦者:弓立 順子 - フラワーロス問題に着目し、自然由来の和紙と組み合わせて壁装材の開発を行った。豊田市の伝統工芸である小原和紙と廃棄花を組み合わせて紙の強度実験を行い、十分な強度の紙を生み出すことができた。新しい素材開発としてだけでなく、デザイン性の高い作品が制作できた。
- 金城学院大学CSR活動の企画提案
- 福島 涼(生活環境学部 環境デザイン学科 空間デザインコース)
推薦者:弓立 順子 - プラスチックごみの問題に対し、身近な大学生活の中で取り組んだ研究である。実証実験および事前、事後アンケートから学生の意識やマイボトル利用の実態を把握した。視覚的デザインを活用したロゴの作成から、ノベルティーグッズへと展開し、環境意識向上や大学のCSR活動の企画として提案を行った。
椙山女学園大学
- 茶花 -抽出時間を視覚化する紅茶のティーバッグ-
- 大浦 沙弥音(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:山下健 - タグの形状変化によって抽出時間が分かる紅茶のティーバッグの提案である。ティーバッグを吊る糸の毛細管現象を利用して花びらの形をした紙製のタグに湯を染み込ませ、紙についた折り目に沿って花びらが開花することで抽出時間を知らせてくれる。紅茶の種類によって適切な時間が異なるため、糸と紙の種類及び組み合わせについて数多くの実験を行い、適切な条件を導き出した。この仕組みによって、待ち時間をワクワクさせる体験へ変えることができたことを評価し、ここに推薦いたします。
- もようがえ -組み変えて楽しむ壁掛けインテリア-
- 大谷 綾香(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:山下健 - ジグソーパズルの「遊んで飾る」要素と、可変パズルの「1つのパズルで何通りものパターンを楽しむ」要素を掛け合わせた繰り返し遊んで、壁面へ飾れるインテリア用途のパズルの提案である。施設や住宅での利用を想定した木製パズルとこどもの利用を想定した遊具寄りの樹脂製パズルを制作し、どちらも3次元に加工することで、壁面へ飾った時に立体感や陰影を楽しむことができる。卒業展では実際にお子さんが長時間組み替えを楽しむ光景も見られ、完成度の高い提案であったことを評価し、ここに推薦いたします。
愛知産業大学
- プロダクト開発における画像生成AI活用方法の研究
- CHENG YONGJIE(造形学研究科 デザイン学専攻 プロダクトデザイン領域)
推薦者:森 理恵 - 本研究は、AIがデザインに関与する可能性を探り、デザイナーがより効率的に創作できる手法を検討することを目的とした。椅子のデザイン生成を通じて、AIとさまざまな技術を組み合わせた工業製造向けのデザインプロセスを模索した。しかし、生成モデルの品質には課題があり、実用化には至らなかった。しかし、本研究を通じてAIの限界や課題を深く理解し、設計の原理を体系的に把握する契機となった。これらの成果は、本研究の目的に照らして十分に意義があり、高く評価できる。
- 外国人観光用タクシーのデザイン
- LYU BAOKUN(造形学研究科 デザイン学専攻 プロダクトデザイン領域)
推薦者:木村 光 - 本研究は外国人観光客に向けて、より良い旅行体験とサービスを提供できるタクシーのデザインに関する提案を行うことを目的とし、観光地の調査・分析を行った後に、AI化に対応でき、日本の文化の雰囲気が感じ取れるモビリティの提案を行った。デザインの発想と、そこに至るデザイン技法は研究の成果として優れており、今後のモビリティデザインのあり方を明確に示すことができた。
福井工業大学
- 少人数未就学児グループにおける英語学習への協働支援アプリケーションのUX/UIデザインの提案 ~UIプロトタイプ「InBuddy」を用いたデザインの効果の考察~
- グエン トウ チャン(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:川島洋一 - 英語学習の早期化にともない未就学児が英語を学ぶ社会情勢に着目し、学習効果の研究とUI/UXのデザイン制作を行った。子どもの効果的な学習法として、「グループ」と「アクティビティ」の考えが有効と仮説をたて、UIプロトタイプをデザインした。未就学児を対象とするユーザーテストでは、調査方法に工夫を加えデザイン効果の検証を実施しており、学術的な意義も高く評価できる。
- あまみずに関する意識変容を促すツールの開発 ーグラフィックデザインからのアプローチに関する考察ー
- 近藤晶(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:川島洋一 - 一般的な水道施設が存在しない環境下において、雨水を利活用する方法論に関する研究である。著者は共同研究者とともに水道施設がない離島に雨水利用施設を建設した経験や、雨水を飲料水に精製する実験的な商品開発などを通して、主にグラフィックデザインを活用して雨水を利用した飲料が安全に飲めると認識されるためのデザイン開発を行い、その効果を検証した。学会査読論文や海外のデザイン賞などでも、その成果が評価されている。
- 透聴
- 大橋寧音(環境情報学部 デザイン学科)
推薦者:川島洋一 - 重ね合わされた文字が、見る距離によって鮮明に見える文字の見え方が変わる作品、漢字二文字の熟語が見る方向が上下逆になっても同じ文字に読める作品など、独自のタイポグラフィ研究の成果が優れた作品に結びついた。
- DECORA
- 加藤頼明(環境情報学部 デザイン学科)
推薦者:川島洋一 - 従来からあるメガネの新しい可能性を模索した挑戦的な作品である。眼鏡を広くアイウエアと捉え、レンズ・フレーム・ジョイントという構成要素を原点に遡って疑い、新たに額で支持する形を提案した。形態のバリエーションや視覚補正を超えた発展性を提案するなどの挑戦が評価された。
名古屋市立大学
- 「多様性のパラドックス」に関する研究 -スペキュラティブデザイン手法を用いた、過度な多様性追求がもたらす社会的分断の作品制作
- 島田彩矢(芸術工学部 産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:影山友章 - 当たり前のように追求されている社会指針に一石を投じる,俯瞰的な着眼点が見事であった。また,スペキュラティブデザイン手法でそれらの問題点を表現した作品群もクオリティが高く,意図通り議論を巻き起こすことができていた。
名古屋工業大学
- 卒業制作/こどもと共奏する町工場
- 山内友実(工学部 社会工学科 建築・デザイン分野)
推薦者:伊藤孝紀 - 「担い手不足の町工場」と「創造の場が減る子どもたち」に向けた提案です。住宅地から道を引き込み、工場と地域を結ぶ。中小企業が存続するための地域に開かれた建築のあり方を示す優れた視点と実用性から推薦します。
- 卒業制作/中島停流所
- 山田赳行(工学部 創造工学教育課程 情報・社会 建築・デザイン主軸)
推薦者:伊藤孝紀 - 旭川の恵みを再認識するための空間を提案しています。旭川に残る中洲を敷地とし、旭川の利水を見える化し、新たな空間体験として提示しており、その優れた視点から、この作品を推薦します。
以上