Monthly Archives: March 2016

平成27年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」報告

名 称
日本デザイン学会奨励賞第3支部
目 的
表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
対 象
日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
人 数
2名/各所属機関(大学、大学院を持つ機関は各1名

受賞者:

(推薦書提出順)

福井工業大学

「漉漆」 ~和紙と漆の器~
堀塲 建太(工学部 デザイン学科 プロダクトデザインコース)
推薦者:池田岳史
日本に数多くある伝統工芸に目を向け,和紙,漆を用いた新たな魅力溢れる器の制作を実験的に行った成果を発表した。
地元福井県の伝統工芸である和紙,漆を用い,地域産業としての今後の可能性を示唆する成果を得ている点が評価された。

福井工業大学大学院

温泉街活性化のための映像表現 -あわら市中心市街地を事例として-
小南 秀一(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
本研究では,様々な映像表現手法の比較検討,映像表現に用いる地域イメージの抽出といった課程を経て制作された映像作品の実空間での発表,評価を行っている。
具体的には,あわら温泉地域の活性化を目的としたインタラクティブ映像表現作品の制作と評価結果を発表した。
地域問題を扱い,その成果から映像による活性化の可能性まで言及できた点が評価された。

椙山女学園大学

Stit Chair
山下 愛(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
椅子張り縫製の視点から新しいデザインに取り組んだオリジナルデザインを評価した。
反射材パンプスバンド
チャン マイリン(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
実験を繰り返し実用値を求めた研究内容を評価した。

名古屋学芸大学大学院

日本と韓国のパッケージデザインから見える、似ているようで似ていない文化
宮内萌(メディア造形学部 メディア造形研究科)
推薦者:黄ロビン
自らの現地取材と、日韓両国の延べ600人の面接とインターネット調査によるアンケート調査を実施し、お互いのパッケージデザイン比較から両国の文化の共通項と違いを導き出し、その結果報告を分かりやすく可視化し展示発表を行った。更にアンケートの共通項を元に、両国に受け入れられる「米、牛乳、洗剤」のパッケージ案を試作した。これら一連の研究活動を高く評価する。

名古屋学芸大学

地域おこしのデザインーー八百津
土屋小春(メディア造形学部 デザイン学科 ビジュアルコミュニケーションデザインコース)
推薦者:黄ロビン
何年後かになくなってしまうかもしれない「消滅可能性都市」と指定されている岐阜県加茂郡八百津町。自身が育った八百津の魅力を掘り起こし、「であう」「つくる」「くらす」という三つのキーワードから、町歩き、手作り教室、暮らしの情報を改めて発信することで、地域の活性化を促すコミュニケーションデザインを高く評価する。

長野大学

上田産ジオウ(地黄)を利用した入浴剤のデザイン
郭 庚煕(企業情報学部 企業情報学科 デザインコース)
推薦者:禹在勇
郭 庚煕さんの研究は、地域資源である「地黄」による地域活性の可能性について、信州上田産「ジオウ」を用いた商品開発やパッケージデザインを研究し、「ジオウ」入りの化粧水、石鹸、グリム等、地域資源「地黄」を活かした 6 次産業化に「信州上田薬草の会」と共に、継続可能な農村デザイン・地域活性化に繋がる活動を行った。これから、さらなる農村デザインの研究が期待できる。
地域活性化のための農村デザインー長野県上田市「稲倉の棚田」再生プロジェクトー
高橋 真央(企業情報学部 企業情報学科 デザインコース)
推薦者:禹在勇
高橋 真央さんの研究は、地域資源として取り上げ、日本の棚田百選に選ばれた稲倉の棚田であり、自然の傾斜を利用して食と農を考え、先人たちによって創られた。山の斜面の曲線を活かして造られた棚田は、芸術品のようなものであり、先人の知恵がそのまま残されている。このような棚田において、農村デザインの一環として、農・学・官連携による再生プロジェクトを実施し、「稲倉の棚田」保全活動に取り組み、今後、実際の製品化に向けた様々なデザインの実用化が期待される。

愛知県立芸術大学大学院

トヨタ産業技術記念館20周年記念プロジェクションマッピング 「未来へ続く夢」
杉森順子(美術研究科 デザイン領域)
推薦者:柴崎幸次
本作品は、トヨタ産業技術記念館開館20周年特別展「喜一郎の夢・その後」展において上映された、エントランスホールでの3壁面プロジェクションマッピングによる映像(7分)作品である。
室内の大空間や展覧会場等でのプロジェクションマッピングを活用したデザイン手法の研究作品として、公共性の高い場所での作品発表を実施し効果を検証したことなど、優れた研究及び制作活動として評価している。

愛知産業大学

平和教育についての研究 ~戦争体験者の語りからの絵本制作授業~
氏家 慶子(造形学部(通信教育部) デザイン学科 グラフィックデザイン)
推薦者:廣瀬伸行
中学校における平和教育の取り組みと美術教育を組み合わせた指導案の研究を行った。今ある平和と今後について考えさせる授業デザインを目指し、戦争体験者を独自取材した映像教材に基づき、生徒のディスカッションから絵本制作につなげるていく一連の教材作成と指導方法の提案と、中学校美術部での実践と検証が発表された。社会的な着眼点と実践的な研究に基づいた提案に、今後の継続とさらなる発展を期待して評価した。

名古屋市立大学

新型カテーテルの最適化デザイン設計に関する研究 -origamiからのアプローチ
島田 達(芸術工学研究科 産業イノベーションデザイン領域)
推薦者:國本桂史
血管カテーテルによって動脈瘤を安全裏に処置する新しいデバイスのアイデアと方法論とを提案した。origamiのユニークな手法を用い、円筒状構造体の直径を自在に変化させて血管内壁に密着し、かつ屈曲する血管内壁にフレキシブルにフィットする特性をもつシーリングデバイスをカテーテルに封入して動脈瘤患部まで到達し、当該箇所で展開して局所的に血管内壁をシーリングできる。これにより、動脈瘤に血液が流入せず、かつ生体との高い親和性を維持することまでを提案している。新しい動脈瘤治療デバイスの可能性を高く評価した。
医療行為に使用する眼鏡の最適化デザイン設計要件の抽出に関する研究
本田 光太朗(芸術工学研究科 産業イノベーションデザイン領域)
推薦者:國本桂史
医療行為(特に手術)において、視線に合わせて頭部を下方に傾けるため、眼鏡が前方あるいは下方にずれる可能性が高い。現状では鼻に掛かるブリッジ部分にテープの一端を巻き、他端を上方の額に貼って固定するなど工夫がされているが、汗や皮脂で長時間もたない、眼鏡の自重により次第にテープが剥がれてくる、途中で眼鏡の姿勢を直す際に不衛生になるなどの問題がある。そこで、固定(安定)機能を重視した次世代の医療従事者用眼鏡のデザイン提案が行われた。力学的・構造学的に適切な提案がなされ、また情報端末として医療行為中にリアルタイムで各種生体情報の表示や重ね合わせによるAR, MR用途も提示された。画期的な医療行為用スマート眼鏡デバイスの開発が期待される。

以上