Category Archives: 事業報告

令和5年度研究発表会・懇親会

第3支部では今年度も支部に所属する会員の皆さん研究成果の交流を促進し、地域へのデザイン啓蒙を図るための様々な事業を行っています。

第3支部研究発表会

目  的: 研究発表を通し会員や学生の交流を深める。発表内容: デザインに関係したあらゆるテーマを発表対象とした。発表者自身が行ってきたデザイン研究、今後のデザイン研究の方向性・発展性などについて、自由な発想で発表していただいた。

開催日時: 令和5 年2月18日(土)11時~16時45分

内  容: 口頭発表、ポスター発表、表彰

会  場: 愛知県立芸術大学・新デザイン棟

参 加 者: 55名

発  表: 30件(口頭18件、ポスター12件)

概  要: コロナ禍以降、三年ぶり完全対面形式での開催。会長小林先生も参加してくれた。大人数の密集を避ける為、今回は学生発表のみで実施。受付の検温・消毒を徹底や、発表会場を常に開窓して換気、カイロの配布など、万全な対策を取り組んで行った。マスクの常時着用はもちろん、昼食は室外で分散して黙食、優秀発表賞の表彰のみで懇親会はなし。

優秀発表賞受賞者

ユーザーが介入できる余白を残した製品とユーザー満足度の関係調査
黒田 和花 (名古屋市立大学)
アップサイクル事業のモデルケース
原 蒼 (金城学院大学)
440mm Designer
川崎 怜央 (福井工業大学)

運営組織

委員長:黄ロビン(第3支部長、名古屋学芸大学)

副委員長:川島洋一(同副支部長、福井工業大学)

運営委員長: 影山友章(名古屋市立大学)

運営委員:廣瀬伸行(愛知産業大学)、弓立順子(金城学院大学)、楊寧(椙山女学園大学)、村井陽平(福井工業大学)、西尾浩一『名古屋学芸大学)、加藤大香士(名古屋市立大学)(順不同)

令和元年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」報告

名 称
日本デザイン学会奨励賞第3支部
目 的
表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
対 象
日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
人 数
学部枠2名・大学院前期課程(修士)枠2名、大学院後期課程(博士)枠2名/各所属機関

受賞者:

(順不同)

椙山女学園大学

心理評価と体圧分布を用いた車椅子クッションの座り心地予測に関する研究
大羽美宇(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
クッション材の素材の違いからおこる、体圧分布と心理評価の関係を、重回帰分析を用いて定量的に分析し指標化を行った。学術的価値を評価し推薦した。
車椅子マップ 観光地におけるマップ制作
家崎紗依、小川紗英、渡辺実涼(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
自走式車椅子と介助式車椅子の走行の違いを、実走実験を行いマップに表現した。また携帯性を考え、ミウラ折り・招待状折り・蛇折り・90度折り・180度折りなどを取り入れ、楽しめるマップを制作した。作品としての完成度の高さを評価し推薦した。

金城学院大学

into one ~一人暮らしの女性のための家具~
眞金 遙(生活環境学部 環境デザイン学科 空間デザインコース)
推薦者:弓立 順子
20代一人暮らしの女性をターゲットとし、その暮らしを調査した上で、女性特有の持ち物などを効率的に収納できる家具を設計・制作した。単なるアイデアだけにとどまらず実際の制作過程に於いて使用される材質をはじめ、金物や照明、ガラスなど詳細設計まで取り組むことができた。

名古屋学芸大学

名古屋城外堀交流
道前知佳(メディア造形学部 デザイン学科 空間デザインコース)
推薦者:中西正明
ニューヨークハイラインの地下版。かつて名鉄電車が走っていた名古屋城外堀の底をインバウンド交流の場とし、無機的な名古屋の街並みに例外的な風情のある清水橋の再開発を中心とした点が評価できる
リラックスできる棚
山本悠真(メディア造形学部 デザイン学科 空間デザインコース)
推薦者:中西正明
仕切りの移動で変化できる棚の下から椅子が出てくるという柔軟な発想と、スケジュールを遵守して制作した姿勢が評価できる。
自動運転がもたらす、バイクの新たな楽しみ
神谷啓士郎(メディア造形研究科)
推薦者:黄ロビン
本論ではモーターサイクルにおける技術の側面(自動運転)と感性の側面(楽しみ)などの基礎的考察に基づき、現在ライフスタイルのアウトドアブームに着目して、自動運転技術を使用する新たなバイクの楽しみ方を提案する研究であった。
撮影者のまなざし〜写真撮影の動機となった対象の研究
樋口誠也(メディア造形研究科)
推薦者:黄ロビン
写真を撮るという行為について、自身が見たい画像(イメージ)へと変換する欲求が根源にあることが語られ、それにも関わらず、その欲求が絵画や写真における「フレーム」としてのヴィジュアリティ(視覚性)に規定されていることを明らかにしていく。その論点自体は、決して目新しいものではないが、自身の写真実践として語られることにより、動機と知覚、認知と記憶などの複雑な関係性を問うものとなっている。研究と作品実践がユニークに結実したものとして高く評価する。

愛知産業大学

3DCGによるカートゥーンテイストを持ったアニメーション制作の研究
小野広喬(造形学部 デザイン学科 ディジタルデザイン)
推薦者:佐々木尚孝
フル3DCGアニメーションを戯画的表現と3次元表現との中間表現で制作し登場するキャラクタの動作やその表現技法において優れており、今後の活躍が期待できる。

名古屋工業大学

動画編集による紙芝居の魅力の変化に関する研究
山口洸貴(社会工学専攻 建築・デザイン分野)
推薦者:須藤正時
2012年にパリ・ユネスコ本部にて「紙芝居文化の会」と「小さな図書館」によって「ヨーロッパ紙芝居会議」が共催された。また同年北米では紙芝居の研究でPh.D.が取得されるなど日本発祥の文化である紙芝居が世界に広がりつつある。 本研究はこのような背景の元に紙芝居を更に魅力的なものとするために5つの紙芝居評価サンプル(ストーリーは同一)を用意し感性評価することで若者が魅力を感じる新しい紙芝居表現に関する研究を行った。 その結果、無編集動画より紙芝居にアニメーション合成することで魅力やわかりやすさを増加することを明らかにした。 動画紙芝居という新しいジャンルの開拓に繋がる可能性を見出した。
オフィス用低座家具の提案
豊福拓歩(工学部 社会工学科 建築・デザイン分野)
推薦者:須藤正時
近年、ワーカー自身が多様化した仕事内容に応じて環境を選ぶことができる働き方として「アクティビティ・ベースド・ワーキング」(ABW)という考えが登場し、多様な空間において様々な姿勢をとる機会が増えた。そのようななか、スツールは全方向から座ることができるため、ミーティングスペースなどに用いられる場合がある。しかし、スツールには背もたれや腰当てがなく上半身が固定されないため、安定して座ることができない。本作品は、スツールと同様に全方向から座ることができるが、一部が変形して腰当てとして機能する椅子である。また、ビーズクッションと異なり、立ち上がった際に元の形へ復元する特徴もある。さらに、これらの機能を実現するための意匠がユニークである。以上より、本作品は機能と意匠について新規性が高いため推薦した。

名古屋市立大学

UXデザイン手法を用いた「撮影」の体験価値の分析及び研究
山木美穂(芸術工学部 産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:影山友章
ECサイトやSNS等によるオンラインショッピング市場は、年々拡 大し続けている。また、デジタルファブリケーションの普及により、個人でモノを作ることのハードルが下がってきて いる。これらの背景から、個人作家が自身の作品をネット上で販売する、新しい「クリエイティブ産業」が確立されてきており、山木さん は、この要域における新しいソリューションを生み出した。“個人作家が自宅の一室で作品撮影を行う際、カメラを覗いた状態では光源設 定ができない”という問題点を、UXデザインの手法により導きだした。そして、それらの問題点を解決するプロダクト、「カメラを覗き ながら、遠隔操作で光源調整ができる照明」を生み出した。これらの一連のプロセスが明瞭であり、推薦に値する。
快適で安全な入浴のためのデザイン研究
川島芽衣(芸術工学部 産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:加藤大香士
日本では、入浴中の熱中症状による浴槽内死亡事例が多い。特に高齢者の入浴事故は日本特有の社会問題となっている。本研究では、日本特有の文化である入浴習慣を快適・安全に続けられるために必要な入浴中モニタリングシステムがデザインされた。心理学やIoT 技術を活用した次世代型の浴室環境を構築するために、安全な湯温にコントロールされた湯舟において温感を意図的に操作する工夫や、耳体温(深部体温)のモニタリングをしながら出浴を促すしくみを新たに提案した。ユーザの日々の体調変化にまで対応しようとするデザイン提案を高く評価する。
機械学習を用いた看護を必要とする環境における ベッド上動作の認識の試み
茅野洋平(芸術工学研究科 産業イノベーションデザイン専攻)
推薦者:加藤大香士
臨床、介護の現場においてベッドからの転倒などによる治療中の合併症の防⽌や療養環境における安全性の確保は常に課題とされる。超⾼齢化により看護・介護領域での従事者の負担の増加する現在、患者と医療従事者、双⽅の様々な課題解決が求められる医療現場で、IOT やAI を活⽤した健康、医療、介護のパラダイムシフトが求められている。救急看護師でもある茅野さんは、ディープラーニングを⽤いた動作認識技術であるHuman Activity Recognition(HAR)に着目した。看護や介護を必要とする状況において、動作認識技術は、せん妄や病識の低下によるベッドからの転落、点滴やチューブ類の計画外抜去など、医療において⻑年課題となっている問題に対する解決への⽷⼝となる可能性があり、最先端技術を用いたデザイン分野における展開と㍊ても注目に値するものである。

福井工業大学

マナビ TO GO -学びの環境を変える学習支援システムの提案-
吉村研人(環境情報学部 デザイン学科 環境・プロダクトデザインコース)
推薦者:池田岳史
本作品は,主に大学内での使用を想定した収納,作業テーブルの機能を持つ学習支援ワゴンである。収納,移動,グループワークなど,大学生活においての問題点を抽出し,現実的な手法で解決を提案している。
地域資源の映像化における「物語」を介在させた表現手法の研究
高橋紀子(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
福井県の地域資源を再認識・再発見し,映像により発信することを目的とした研究である。地域をテーマとした国内作品,作家に関する調査,ケーススタディーとしての短編映画制作を通じて得た知見を活かした作品である「Missing」も制作している。
地域資源の再生を目指す活動の記録 -限界集落A43の事例-
松原かおり(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
福井市美山地区の限界集落において2年間に渡って取材した,「芦炭窯」や「ベジタボーファーム」といった活動の記録を行うとともに,地域資源の再生に向けた広報材料としての映像作品制作に取り組み,表現手法の検討を加えた上で,最終的に「限界集落A43のプロモーション映像」の制作を行っている。

以上

平成30年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」報告

名 称
日本デザイン学会奨励賞第3支部
目 的
表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
対 象
日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
人 数
学部枠2名・大学院前期課程(修士)枠2名、大学院後期課程(博士)枠2名/各所属機関

受賞者:

(順不同)

椙山女学園大学

帰巣 -生きものの巣構造を応用したデザイン-
佐橋美帆(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:山下健
生き物の巣に着目し、巣の構造を応用した仮設空間に取り組んだ。構造理解のため、疑似的な素材で生き物の巣を制作し、つくり方の特徴を抽出したのち、人間が入ることのできる大きさの構造物を制作した。適切な素材・工法を検討するため、何度も試作を行い、ビスなど用いずに組立て、分解可能な形態を導き出したことを高く評価した。

金城学院大学

記憶のかたち
安江亜姫奈(生活環境学部 環境デザイン学科)
推薦者:弓立 順子
近年の日本社会の問題である墓や仏壇に対し、変化する現代の生活スタイルに合わせた新たな故人を偲ぶ方法を提案している。記憶にアプローチする香りや手触りの要素を取り入れ、故人を身近に感じ、忙しい現代の生活の中で、静かな心休まる時間を作り出すデザインとなった。

福井工業大学

ハコブハコ ヒト・モノ・ココロを運ぶ
三田村春佳(環境情報学部 デザイン学科 環境・プロダクトデザインコース)
推薦者:池田岳史
本研究は、交通の中でも多くの課題を抱える「物流」に焦点を当あて、物流における?ムダ”を減らすことを研究の大きな目的としている。具体的には、第3セクターとして運行しているえちぜん鉄道を対象とした新しい貨客混載の在り方(システム)とリターナブルボックスの提案、制作を行った。現場に何度も足を運び、ヒアリング調査を重ねて研究にフィードバックしており、最終的には実現可能性が高い提案を行っている。さらに、利用者に理解してもらうためのメディアツール(リーフレットやロゴ等)のデザインも提案しており、その点についても高く評価した。
握る杖 持ち手を中心とした杖の研究
楠大和(大学院工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
杖の握りやすさや使いやすさをモデルの制作と使用感のテストを繰り返すことによって握り手の形状を形成していった。また、手のひらと握り手の接点圧力を測定するなど人間工学的な観点に加え、杖を持つことの安心感や不安、抵抗感など利用者の精神面に踏み込んだ観点をもって開発を行うことでこれまで杖を使わなかった利用者層への普及の可能性を示した。

名古屋学芸大学

素材と素材の音
福田凌也(メディア造形学部 デザイン学科 SDコース)
推薦者:中西正明
ピタゴラ装置風の動作機器を作り、様々な素材と素材が種々の動作でぶつかり合う音を表現した。視覚的にも面白い。
「ファッションにおける脱構築」
鈴木良麻(メディア造形研究科)
推薦者:黄ロビン
ファッション分野で脱構築と呼ばれるデザインの背景や表現手法を、哲学、建築分野の思想や技術と絡めて研究し作品制作を行った。作品では複数の対立軸を設定してデザインに反映させることで、形態操作の根拠を明らかにしている。また、実験的な試みの中にも製品化を意識し、服飾材としての妥当性も吟味している。(文責:内田和邦)
M U S U B I
松井るな(メディア造形学部 デザイン学科 ビジュアルコミュニケーションデザインコース)
推薦者:黄ロビン
 来たる2020年の東京オリンピックに向けて、外国の方々に日本の魅力をアピールすることを狙いに、日本人にとって身近な「おむすび」をテーマに取り上げ、おむすびの歴史、お米づくり、おむすび屋、具材、おむすびの皿まで、その文化について深く研究し、取材し、視覚伝達デザインとしての見せ方を工夫しながら、一冊の本「MUSUBI」にまとめた。さらに今回の東京オリンピックに参加する各国の、おむすびに合う具材をひとつずつ取り上げて、今までにないおむすびを考案し、実際に握って写真に収め、カタロログにした。ポスターも制作し、これらをまとめてひとつの空間に展示した。このMUSUBIのコミュニケーションデザインは、日本の魅力をあらためて伝えるだけでなく、グローバルに広がるおむすびの可能性を提案している。(文責:梶田渉)
技術革新に伴う新しいモビリティの在り方ーー愛着の持てる空間、空間の交換性の提案
飯柴頼(メディア造形研究科)
推薦者:黄ロビン
自動車を居住空間と駆動部分に分離し、愛着という概念で室内空間を再定義、都市型生活を営む家族が使うミニヴァンの将来形として提案している。外形スタイルは斜張橋のイメージを取り入れ浮遊するキャビン居住空間をサスペンドする。愛着という概念を、単に形態や使い勝手のみに限定せず居心地、室内空間での体験、家族・友人と過ごす時間経過、サーヴィスなどにも拡大して捉えようとしておりユニークかつ新しい捉え方である。(文責:大島誠)

名古屋工業大学

戯遊の商法 -地方都市型カジノの提案-
森本創一朗(工学部 建築・デザイン工学科)
推薦者:伊藤孝紀
若者の購買意欲の減少とインターネットを使った購入方法によって、既存の百貨店や商店街は大きな痛手を負っている。そのようななか、岐阜市柳ケ瀬商店街を対象に、新しい遊びのコンテンツ(カジノ)を挿入することで、購買意欲に加え、遊ぶ行為を誘発し活性化に寄与する提案である。社会に一石を投じる可能性があることから推薦する。

名古屋市立大学

「小児の頭部腫瘍の放射線治療における位置姿勢保持装置のデザイン設計要件の抽出」
加藤悠介( 芸術工学部 産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:國本桂史
国立研究開発法人国立成育医療センターとともに「小児の頭部腫瘍の放射線治療における位置姿勢保持装置のデザイン設計要件の抽出」を行い、現場での実証研究とともに小児におけるガンマ線治療に大いに貢献した。
「介護用ロボットアームの最適化デザイン設計要件・Optimization design of robot arm for nursing care Design design requirement」
菊地有美子(芸術工学部 産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:國本桂史
ロボットハンドの研究において革新的な構造を研究し、医療現場での実証研究を行ない、今後のロボットアーム・ハンドの利用の可能性を前進させた。

愛知県立芸術大学

手からウロコの触図展
林子翔(美術研究科博士後期課程 デザイン領域)
推薦者:柴崎幸次
  『手からウロコの触図展』は、林子翔の研究テーマである触知図形を活用した作品の研究発表展である。
動物や昆虫、貝類などをモチーフとした様々なグラフィックを、触覚情報として置き換え、わかりやすく美しいデザイン開発を研究している。作品は、視覚障害者に伝達しやすい素材や制作方法を研究し、触読監修を経て修正を重ねる方法で開発しており、全盲から弱視、さらに晴眼者の方にもそれぞれの楽しみが見出せるコンテンツとして制作されている。
本展は2019年2月13日~17日名古屋市民ギャラリー矢田で開催した。出品した触図作品は、誰もが楽しめるグラフィック作品と、ユニバーサルデザインとしての製品開発プロセスも展示した。新聞等のメディアにも取り上げられ話題を呼び、遠方からの来場者も多く滞在時間も長い、総じて満足度の高い展覧会となった。また視覚と触覚を意識してピクトグラムを作りあげるグラフィックデザイン手法も独創性があり、視覚的なグラフィックとしても洗練され、図像のわかりやすさの追求にも繋がっていることも評価している。よって本展及び作品を、日本デザイン学会奨励賞として推薦する。

長岡造形大学

地域連携による摂田屋醸造製品のPRを目的とした6次産業ビジネスの確立
近藤祐未(造形研究科 イノベーションデザイン領域)
推薦者:板垣順平
推薦対象者である近藤祐未(以下対象者と記述)は,上記活動チームの中心となって長岡市内の中小企業や地元農業高校と協力しながら長岡の特産品である味噌や醤油を使った商品を開発し,販売等を行った.また,その活動をビジネスモデルとして「第3回NIIGATAビジネスアイデアコンテスト」に応募し,応募総数42組の中からグランプリを受賞した.デザイン・造形系の分野で当該コンテストのグランプリを受賞したのは初めてである.また,対象者は,この取り組みを修士研究のテーマとして,先般開催された日本デザイン学会第三支部研究発表会においても口頭発表を行った.対象者の研究は,地域・産業の活性化や大学の社会貢献の一助となり得る実践的な研究であり,デザイン・造形系の大学における地域連携や産学連携の在り方を示す研究であるため,対象者を推薦いたします.

愛知淑徳大学

商品販促における名刺デザインの提案
田中泰登(メディアプロデュース学部 メディアプロデュース学科 メディアコミュニケーション専修)
推薦者:宮田雅子
本作品は、店舗で使用される名刺のデザイン表現の可能性を探り、コミュニケーションツールのひとつとして提案した。伝統的な木工技術である組子の造形を取り入れた「建具店の名刺」、指輪のリングサイズを測ることができる「宝飾店の名刺」、香り加工を施した「パンケーキ店の名刺」など、五感に訴える作品を制作した。名刺としての可読性に加え、さまざまな印刷・加工の技術を用いて商品のイメージを強く印象づけることで、名刺のデザインの新たな可能性を意欲的に検討した点を高く評価した。
あやとりを再認識し伝承するデザイン ―「あやとりフォント」の制作を通じて―
 渡邉香純(メディアプロデュース学部 メディアプロデュース学科 メディアコミュニケーション専修)
推薦者:宮田雅子
昔あそびのひとつとして世界各国で親しまれている「あやとり」を題材とし、子どもだけでなく全世代の人々が楽しみながら創造的な遊びに親しむことができる作品を提案した。紐を使い、実際のあやとり遊びの要領で五十音の文字をつくることができる「あやとりフォント」の制作から、そのフォントを活用したロゴマークの制作、冊子『~ひらがなをつくって・まなぶ~ あいうえお あやとり事典』の制作へと展開し、密度の高い提案に仕上げた点を高く評価した。

北陸先端科学技術大学院大学

先端的医療デザインに関する研究
谷口俊平(先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 知識科学系)
推薦者:永井由佳里 薮内公美
ウェルビーイング社会の実現に向けて、個人の生活におけるQoLを高める次世代型の医療デザイン開発研究に従事し、高い実績を示した。
Changes of Design Thinking in Complexity Science
Shen Tao(先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 知識科学系)
推薦者:永井由佳里 薮内公美
デザイン思考研究が社会に普及したが、現実社会の問題はますます複雑化しており、従来の手法では解決策が得られにくくなっているとこが指摘されている。氏の研究は複雑性に対応するためのデザイン思考の改善策を検討し、SDGs等の社会課題に適合させることに成功した。
描画表現の認知構造についての研究
LI,MINGHUI(先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 知識科学系)
推薦者:永井由佳里 薮内公美
知識創造に寄与するとされるスケッチを対象に、描画過程の認知構造の特徴を問堪える実験をおこない、創造性に影響を与える重要なファクターを特定した。

以上

平成29年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」報告

名 称
日本デザイン学会奨励賞第3支部
目 的
表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
対 象
日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
人 数
学部枠2名・大学院前期課程(修士)枠2名、大学院後期課程(博士)枠2名/各所属機関

受賞者:

(推薦書提出順)

福井工業大学

沿岸地域における避難誘導に関する研究 -福井県高浜町和田地区をケーススタディとして-
藤田和秀(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
本論文は,2016年に日本初(アジア初)のBLUE FLAGを取得した若狭和田ビーチを有する福井県高浜町和田地区を対象とした調査と,シミュレーションを基に,災害時の安全かつ円滑な避難計画の提案を行っている。
いつ,どこでででも起こり得る災害時の避難誘導をテーマに,シミュレーションのみに頼らず,詳細な現地調査を組み合わせた研究成果は現実に即している。また,避難計画の提案においても,データに基づく提案にとどまらず,当該地区の街並み,空間性にといったデザイン面に関する検討も行っている点も高く評価した。
継手仕口の技を取り入れた新しいジョイントのデザイン
田中隆司郎(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
本論文は、伝統的な継手仕口の研究から独自のジョイントを開発し、新しい造形において活用することができている。ジョイント部分をポイントとして「魅せる」新たな造形のあり方を示すことができており,今後のプロダクトデザインへの展開が期待される。強度等構造についての評価は行われなかったが、デザインにあたり繰り返し試作を行っており粘り強い努力が感じられ,精度を高めるための独自のノウハウから,最終形態を導き出している。実寸モデルの制作についても高く評価した。

金城学院大学

共生のかたち~篠島グランピング計画~
外山香帆(生活環境学部 環境デザイン学科 住宅・都市環境コース)
推薦者:弓立 順子
人口減少と少子高齢化が進行し、主な産業である漁業の担い手の減少などの問題に直面している愛知県篠島に対し、観光客と島の住民、新しい施設と土地や自然とを「ふたつの要素の共生」「つなぐデザイン」を促す場としてグランピング施設を提案した。かつてゴルフ場であった敷地を、自然との接点を鮮明にし、五感を研ぎ澄ませて自然を感じる空間に蘇らせた。

愛知産業大学

紙による立体制作の研究
店橋良仁(造形学部 デザイン学科)
推薦者:佐々木尚孝
魚の形状を実際の観察に基づいて特徴を抽出して平面形状に分解し、手作りできる立体とした。子どもの工作だけでなく、水族館等での実物との親しみや自然保護意識の醸成に貢献できる。
イラストレーションによる社会問題の視覚化
小田亜未(造形学部 デザイン学科)
推薦者:佐々木尚孝
現在の社会的問題をカルタという表現形式に単純化し、誰でも楽しみながら問題の本質を言葉と絵で把握することができる。ゲームという形式を採用しており、能動的な学習理解をさせる仕組みを持っている。

北陸先端科学技術大学院大学

イノベーション創出のための連動型コミュニティデザイン研究
中田泰子(先端科学技術研究科 知識科学系 博士後期課程)
推薦者:永井由佳里・前川正実
中田泰子氏は、URAとして産学官連携の業務に携わりながら、デザイン思考や知識創造モデルの理論的研究とイノベーションデザインの方法論を適応し、コミュニィ間の相互作用を高めるアクションリサーチに取り組んだ。2件の国際会議を通し、北陸発の産学官連携マッチングイベント Matching HUB を金沢、小樽、熊本と連動的に実践可能な創出事例を示すことに成功した。2件の国際会議で研究発表し、コミュニティデザインの手法を普及する優れた研究であると認められる。
感性情報に基づく景観デザインの主観評価法の提案
由田 徹(知識科学研究科 博士後期課程)
推薦者:永井由佳里・前川正実
由田徹氏は、自身の建築家としての長年の経験を基盤に、地域の生活環境としてのまちづくりや古民家再生による文化再生に取り組みながら、従来の建築評価を超える、建築物と景観を一体化した評価法の構築に取り組んだ。感性評価の先行研究を調査し、主観尺度法を用いた新しい感性評価手法を提案し、その有効性を示した。国際会議に採択され、世界各国の研究者と議論を重ね、文化環境を重視した景観づくりの推進に貢献している。
気づきを誘発するグループワーク活動支援システムのデザイン
清野聖人(先端科学技術研究科 ヒューマンライフデザイン 修士)
推薦者:永井由佳里・前川正実
分散環境でのグループワークによるアイデアを創出することで、デザインの上流工程を活性化する創造性支援システムの開発・実装を行った。メンバー間のフィードバックにより気づきが誘発され、創造的なコミュニケーションが先行研究より長時間にわたり維持されることを示し、インタフェイスデザインの効果を発揮した。
Impact of ECS Design Features on the Performance of SMEs
Chiang Hua Ko(先端科学技術研究科 ヒューマンライフデザイン Master)
推薦者:永井由佳里・前川正実
ビジネスのコミュニケーションにおいてタイムマネジメントの効率化を通じて総合的に高いパフォーマンスを発現させるメディアデザインの提案を行った。実際に開発したシステムを、従来普及している技術と比較する調査を行い、どのような特徴がビジネスコミュニケーションの諸問題の改善に有効かを明らかにし、よりよいシステムを探索した。今後、改良を経て普及することが見込まれる。

椙山女学園大学

片手でコンタクトレンズ
阿部有里(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
脳卒中片麻痺障がい者を対象とした自助具の研究で、片手でコンタクトレンズを装着する装置に取り組んだ。試作制作と被験者実験を繰り返し、まぶたを押し上げる仕組みと、眼球を確認する仕組みを考案した。外部発表として、第20回国際福祉健康産業展ウェルフェア2017、第6回介護の日フェア介護福祉機器展、自助具フォーラム2017、日本デザイン学会第3支部研究発表会で研究発表と作品展示を行った。1年間の取り組みを高く評価した。
片手でミニドレッサー
梅原愛美(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
脳卒中片麻痺障がい者を対象とした自助具の研究で、片手で化粧品の固定とキャップが取り外しできる装置に取り組んだ。道具としてではなくインテリアに溶け込むデザインを考案した。外部発表として、第20回国際福祉健康産業展ウェルフェア2017、第6回介護の日フェア介護福祉機器展、自助具フォーラム2017、日本デザイン学会第3支部研究発表会で研究発表と作品展示を行った。1年間の取り組みを高く評価した。

名古屋学芸大学

名古屋伝統工芸染色を用いた服飾表現
佐橋菜月( メディア造形研究科 メディア造形専攻)
推薦者:黄ロビン
名古屋友禅と有松・鳴海絞りを用いた作品制作のために、詳細なヒヤリングを行い技術や方法を整理し、文献からも確認することができない道具の名称や形状を後世に伝える知としてまとめる研究論文には意義があり、日本の伝統工芸やきものに対する愛情が強く感じられる。
作品においては、熱可塑性素材ではない天然繊維による立体形成とその形状保持に挑戦してテキスタイルおよびアパレル作品を制作した。前例となるサンプルが皆無に等しい状況下での制作であり、オリジナリティの高さが評価に値する。
(文責:内田和邦)
服装造形におけるラッフルに関する研究
錦見淳子(メディア造形研究科 メディア造形専攻)
推薦者:黄ロビン
通常ドレーピングで仕上がり形状を確認する服飾の装飾であるラッフルを、使用素材の特質、原料、織り組織、厚さ、地の目など細かく実験データを取集し、一定の結果を導いている。この実験データを基に男女のデザインを制作している。
主要素材も通常副資材であるものを使用し、制作者のメッセージがある作品に仕上がっている。
(文責:炭釜啓人)
LINEAR-触覚UIのIoTヘッドフォンの研究と提案
弟子丸哲也(メディア造形学部 デザイン学科 スペースプロダクトデザイン)
推薦者:黄ロビン
IoTの時代における触覚制御の新型ヘッドフォンの提案である。タッチパネルを用いた制御システムは特徴的で、視覚障がい者も健全者も使用可能な提案だ。外観形態と機能性とのバランスがうまく、美しいデザインが出来た。
周到な調査に基づき構想を展開し、綿密な設計過程を経て、完成度の高いデザイン。特に試作・検討・修正諸作業の積み重ねを高く評価したい。
(文責:黄ロビン)
22歳のなかみ (卒業制作)
小澤ことは(メディア造形学部 デザイン学科 スペースプロダクトデザイン)
推薦者:黄ロビン
この作品は、四年制大学を卒業して社会に出る直前の学生を中心に、22歳の色々な人の考え方や価値観とその背景である人生を見て考えることができるように、インタビューを通じて、各自のアーカイブを14枚の大型パネルを引き出し式に展示して見せることで、場のデザインを行ったものであり、高く評価できる。

名古屋工業大学

くらしを分つムラ
奥村健一朗(建築・デザイン学科)
推薦者:伊藤孝紀
カバタのすゝめ
吉田夏稀(建築・デザイン学科)
推薦者:伊藤孝紀

名古屋市立大学

ハイブリッド手術室対応型の電気メスのデザイン要件の研究
鈴木美帆(名古屋市立大学産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:國本桂史
外科手術で用いる電気メスの機能とその運用方法とを新たに設計、試作、検証し、実用化に向けたデザイン要件の抽出を行い、ハイブリッド手術室対応型の使いやすい電気メスとその使用法を提案した。試作モデルのコンセプトはバイオリン弓把持法でのメス操作が可能な新しい電気メスであり、現場調査、プロトタイピング、医療従事者による使用感の検討、構造解析が適切に行われた。以上から、プロダクトデザイン研究として高く評価する。なお本研究の成果は、平成29年度日本デザイン学会第3支部研究発表会で発表された。
(文責:加藤大香士)
患者に対する病室内の音環境に関するデザイン要件の研究
谷上昂(名古屋市立大学産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:國本桂史
入院患者の安静を阻害する騒音を調査し、最適な病室環境づくりのための病室空間の調査に基づき、病室内の音環境を改善するデザイン提案を行った。吸音・遮音が可能なタイルを並べて敷き詰めることにより、手軽に貼付場所や面積を調節できる開発コンセプトにした。タイルの材質検討、表面加工の吸音・遮音特性の周波数解析、騒音計測等が適宜おこなわれ、最終デザインが導出された。以上から、プロダクトデザイン研究として高く評価する。なお本研究の成果は、平成29年度日本デザイン学会第3支部研究発表会で発表された。
(文責:加藤大香士)

以上

平成28年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」報告

名 称
日本デザイン学会奨励賞第3支部
目 的
表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
対 象
日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
人 数
学部枠2名・大学院枠2名/各所属機関

受賞者:

(推薦書提出順)

北陸先端科学技術大学院大学

共創人材育成プロセスの考察-欧州大学教育の事例研究-
岡田侑里(知識科学研究科)
推薦者:前川正実
一般的に、デザイン活動で優れた成果を挙げる為には、エンジニアや営業などとの共創の成功が要点のひとつである。共創人材育成をいかに計画、実施、検証するかという点については、各々の教育担当者の経験、対象学生の属性や状態等に応じて工夫されてきている実情がある。結果的に、従前の共創人材育成の方法は暗黙的で属人的といえる。この実情に鑑み、本学生の研究は、共創人材育成に関する暗黙知を形式知化するための試みである。欧州の教育機関で共創人材教育に携わる4名の教育者と、シンガポールで次世代教育に関わるデザイナー1名の合計5名の実践者からヒアリングし、得られた質的データの分析を行い、優秀な研究成果を収めたと認められるため推薦する。

長野大学

ジオウを使用した商品デザインの提案
土田ひかり(企業情報学部 企業情報学科 デザインコース)
推薦者:禹在勇
土田ひかりさんの研究は、農業デザインの一環として取り組み、地域資源である「ジオウ」による地域活性の可能性について、信州上田産「ジオウ」を用いた商品開発やパッケージデザインを研究し、「ジオウ」入りの入浴料、化粧水、石鹸、グリム等、地域資源「地黄」を活かした 6 次産業化に「信州上田薬草の会」と共に、継続可能な農村デザイン・地域創生に繋がる活動を行った。これから、さらなる農村デザインの研究が期待できる。
地域活性化のための農業デザイン ー長野県上田市「稲倉の棚田」パッケージデザインー
田堂 玲(企業情報学部 企業情報学科 デザインコース)
推薦者:禹在勇
田堂玲さんの研究は、地域資源として取り上げ、日本の棚田百選に選ばれた稲倉の棚田であり、自然の傾斜を利用して食と農を考え、先人たちによって創られた。山の斜面の曲線を活かして造られた棚田は、芸術品のようなものであり、先人の知恵がそのまま残されている。このような棚田において、農村デザインの一環として、農・学・官連携による再生プロジェクトを実施し、「稲倉の棚田」の米袋、お酒のラベル、ハッピ、帽子、のぼり旗などのデザイン提案を行った。今後、さらなる様々な農業デザインが期待される。

椙山女学園大学

鉄道車両空間の各種寸法の変遷に関わる研究
能村可奈子(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
鉄道車両の各種寸法の変遷を車輌構造の変遷と日本人の身長の変化をキーワードに定量的に分析した。実測に基づいた地道な研究を評価した。(滝本)
crisantemo(菊)
加藤万智(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
彼女の作品は昨年の美濃あかりアートフェスティバルに出品し、美濃市のアート展実行委員会より作品供与依頼が要請され、また、JIPA(日本インテリアプランナー協会)の優秀賞を受けました。その結果は、彼女の普段の努力の賜物であり、他の模範としてこれを推薦いたします。(雨宮)

愛知産業大学

ペンギンの造形を活かした空間表現
柴田紗衣(造形学部 デザイン学科 視覚・情報デザインコース)
推薦者:佐々木尚孝
ペンギンのキャラクター形状の手彩色画を平屋建造物の窓や屋根に相当数配置し、白い屋根を氷原、天井を水面、室内空間を海中に見立てた空間インスタレーション作品である。風になびくペンギンの群れ、海中を泳ぐペンギンの流れが従来の空間とは異なるイメージを想起させる楽しい作品となっており、その発想と労力に対して称賛し、推薦する。

福井工業大学

ことばこ 五感で楽しむ繰り返し言葉
楠 大和(工学部 デザイン学科 プロダクトデザインコース)
推薦者:池田岳史
「キラキラ」,「カタカタ」,「チクチク」といった繰り返し言葉に着目し,それらを感覚的に捉えることのできる素材を収めた「視覚の箱」,「聴覚の箱」,「触覚の箱」を作品とした。この作品は日本語を学んでいる外国人,幼児などをターゲットとしたコミュニケーションツールである。
我々が日常的に用いている繰り返し「言葉」を「見る」,「聴く」,「触る」ことによって意味を知りながら楽しむことができるコミュニケーションツールとなっている。本作品では,特にその発想,素材や形状など意味を伝える工夫といった過程,それらを最終的に実用性のあるツールとしてまとめた点を高く評価した。
地域の原材料と文化を活かした製品デザイン 「かやのなかパーティション」をモデルケースとした開発
景山直恵(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
開発途上国において生活向上の鍵となる製品開発を目的として,麻を使用する蚊帳をモデルケースとした研究である。開発途上国においては,必ずしも電力等インフラ整備が十分ではない地域もあるため,そのような環境下でも産業として成立しうる製品開発を念頭に日本の伝統産業に着目した。特に地元福井の「越前蚊帳」,「越前和紙」の技術と,対象とする開発途上国で入手可能な素材を用いて製品化することを検討している。本研究では,素材入手,製造環境といった現地調査を実際にタイのランパーン市において行い,問題点を分析している点,その結果を基に麻を使用した蚊帳のモデルケースに反映し,提案をまとめるなど,実際に現地で産業化することを強く意識した研究であるといった点を高く評価した。

名古屋学芸大学

addigraph
杉田真由(メディア造形学部 デザイン学科 SPDコース)
推薦者:黄ロビン
高校生(大学受験生)に特化したシリーズ筆記具の制作である。
百人を超えた大規模な基礎調査に基づき、構想を展開した。プロトタイピングしてユーザビリティ検証をし、フィードバックしてから修正して、再び検証を行ったことを高く評価する。
子供のバランス感覚と足の皮膚感覚を鍛える室内遊具
金森 栞(メディア造形学部 デザイン学科 SPDコース)
推薦者:黄ロビン
綿密なプログラムにしたがって、完成度の高い作品を制作した。実際に保育園に行ってユーザビリティ検証したことも評価したい。
内臓感覚を対象とした造形表現に関する研究と実践
所 遥菜(メディア造形研究科)
推薦者:黄ロビン
大学院一年生の頃から2年間にわたり制作し続けてきた彼女のソフト・スカルプチュアに見られる有機的な痕跡と表層を追求する一連の制作は、内臓感覚を触発する素材、形態 (頭部の無い人型)、縫う行為、空間配置、そして身体尺を超えた大きさなど、展示毎に考察し新たな展開をし続けた成果であり、研究・作品共に一人作家としても評価できる。

名古屋市立大学

歯科口腔外科用新型麻酔インジェクターのデザイン設計要件の抽出
二村 龍太郎(芸術工学部 産業イノベーションデザイン学科)
推薦者:國本桂史、加藤大香士
歯科口腔外科用の局所麻酔用注射器のデザイン研究開発を行い、従来型の注射筒の問題点を明確にし、患者の視点、術者の視点、また運用の視点からスタイリングと内部構造を総括的にデザインしたことを評価したため。
介護用ロボットアームのデザイン設計要件の抽出
村田 諒(芸術工学部 情報環境デザイン学科)
推薦者:國本桂史、加藤大香士
将来の介護労働を担う目的で、人間の腕・手の骨格と筋の構造、機能を模したヒューマノイドロボットアーム・ハンドのデザイン開発を担当し、プロダクトデザイン研究室にて行われた先行研究を進化させることに貢献したため。

名古屋工業大学

農ある街の修景
福田雄太郎(工学部 建築・デザイン学科)
推薦者:伊藤孝紀
対象地域のことを詳細にサーベイして、農業をライフスタイルに取り込んだリアリティあるデザイン提案のため推薦する。
表出する居所
杉山弓香(工学部 建築・デザイン学科)
推薦者:伊藤孝紀
既存商店街と子ども達の心理を把握し、建築空間に落とし込んだ創造的なデザイン提案のため推薦する。

以上

平成27年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」報告

名 称
日本デザイン学会奨励賞第3支部
目 的
表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
対 象
日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
人 数
2名/各所属機関(大学、大学院を持つ機関は各1名

受賞者:

(推薦書提出順)

福井工業大学

「漉漆」 ~和紙と漆の器~
堀塲 建太(工学部 デザイン学科 プロダクトデザインコース)
推薦者:池田岳史
日本に数多くある伝統工芸に目を向け,和紙,漆を用いた新たな魅力溢れる器の制作を実験的に行った成果を発表した。
地元福井県の伝統工芸である和紙,漆を用い,地域産業としての今後の可能性を示唆する成果を得ている点が評価された。

福井工業大学大学院

温泉街活性化のための映像表現 -あわら市中心市街地を事例として-
小南 秀一(工学研究科 社会システム学専攻 デザイン学コース)
推薦者:池田岳史
本研究では,様々な映像表現手法の比較検討,映像表現に用いる地域イメージの抽出といった課程を経て制作された映像作品の実空間での発表,評価を行っている。
具体的には,あわら温泉地域の活性化を目的としたインタラクティブ映像表現作品の制作と評価結果を発表した。
地域問題を扱い,その成果から映像による活性化の可能性まで言及できた点が評価された。

椙山女学園大学

Stit Chair
山下 愛(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
椅子張り縫製の視点から新しいデザインに取り組んだオリジナルデザインを評価した。
反射材パンプスバンド
チャン マイリン(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
実験を繰り返し実用値を求めた研究内容を評価した。

名古屋学芸大学大学院

日本と韓国のパッケージデザインから見える、似ているようで似ていない文化
宮内萌(メディア造形学部 メディア造形研究科)
推薦者:黄ロビン
自らの現地取材と、日韓両国の延べ600人の面接とインターネット調査によるアンケート調査を実施し、お互いのパッケージデザイン比較から両国の文化の共通項と違いを導き出し、その結果報告を分かりやすく可視化し展示発表を行った。更にアンケートの共通項を元に、両国に受け入れられる「米、牛乳、洗剤」のパッケージ案を試作した。これら一連の研究活動を高く評価する。

名古屋学芸大学

地域おこしのデザインーー八百津
土屋小春(メディア造形学部 デザイン学科 ビジュアルコミュニケーションデザインコース)
推薦者:黄ロビン
何年後かになくなってしまうかもしれない「消滅可能性都市」と指定されている岐阜県加茂郡八百津町。自身が育った八百津の魅力を掘り起こし、「であう」「つくる」「くらす」という三つのキーワードから、町歩き、手作り教室、暮らしの情報を改めて発信することで、地域の活性化を促すコミュニケーションデザインを高く評価する。

長野大学

上田産ジオウ(地黄)を利用した入浴剤のデザイン
郭 庚煕(企業情報学部 企業情報学科 デザインコース)
推薦者:禹在勇
郭 庚煕さんの研究は、地域資源である「地黄」による地域活性の可能性について、信州上田産「ジオウ」を用いた商品開発やパッケージデザインを研究し、「ジオウ」入りの化粧水、石鹸、グリム等、地域資源「地黄」を活かした 6 次産業化に「信州上田薬草の会」と共に、継続可能な農村デザイン・地域活性化に繋がる活動を行った。これから、さらなる農村デザインの研究が期待できる。
地域活性化のための農村デザインー長野県上田市「稲倉の棚田」再生プロジェクトー
高橋 真央(企業情報学部 企業情報学科 デザインコース)
推薦者:禹在勇
高橋 真央さんの研究は、地域資源として取り上げ、日本の棚田百選に選ばれた稲倉の棚田であり、自然の傾斜を利用して食と農を考え、先人たちによって創られた。山の斜面の曲線を活かして造られた棚田は、芸術品のようなものであり、先人の知恵がそのまま残されている。このような棚田において、農村デザインの一環として、農・学・官連携による再生プロジェクトを実施し、「稲倉の棚田」保全活動に取り組み、今後、実際の製品化に向けた様々なデザインの実用化が期待される。

愛知県立芸術大学大学院

トヨタ産業技術記念館20周年記念プロジェクションマッピング 「未来へ続く夢」
杉森順子(美術研究科 デザイン領域)
推薦者:柴崎幸次
本作品は、トヨタ産業技術記念館開館20周年特別展「喜一郎の夢・その後」展において上映された、エントランスホールでの3壁面プロジェクションマッピングによる映像(7分)作品である。
室内の大空間や展覧会場等でのプロジェクションマッピングを活用したデザイン手法の研究作品として、公共性の高い場所での作品発表を実施し効果を検証したことなど、優れた研究及び制作活動として評価している。

愛知産業大学

平和教育についての研究 ~戦争体験者の語りからの絵本制作授業~
氏家 慶子(造形学部(通信教育部) デザイン学科 グラフィックデザイン)
推薦者:廣瀬伸行
中学校における平和教育の取り組みと美術教育を組み合わせた指導案の研究を行った。今ある平和と今後について考えさせる授業デザインを目指し、戦争体験者を独自取材した映像教材に基づき、生徒のディスカッションから絵本制作につなげるていく一連の教材作成と指導方法の提案と、中学校美術部での実践と検証が発表された。社会的な着眼点と実践的な研究に基づいた提案に、今後の継続とさらなる発展を期待して評価した。

名古屋市立大学

新型カテーテルの最適化デザイン設計に関する研究 -origamiからのアプローチ
島田 達(芸術工学研究科 産業イノベーションデザイン領域)
推薦者:國本桂史
血管カテーテルによって動脈瘤を安全裏に処置する新しいデバイスのアイデアと方法論とを提案した。origamiのユニークな手法を用い、円筒状構造体の直径を自在に変化させて血管内壁に密着し、かつ屈曲する血管内壁にフレキシブルにフィットする特性をもつシーリングデバイスをカテーテルに封入して動脈瘤患部まで到達し、当該箇所で展開して局所的に血管内壁をシーリングできる。これにより、動脈瘤に血液が流入せず、かつ生体との高い親和性を維持することまでを提案している。新しい動脈瘤治療デバイスの可能性を高く評価した。
医療行為に使用する眼鏡の最適化デザイン設計要件の抽出に関する研究
本田 光太朗(芸術工学研究科 産業イノベーションデザイン領域)
推薦者:國本桂史
医療行為(特に手術)において、視線に合わせて頭部を下方に傾けるため、眼鏡が前方あるいは下方にずれる可能性が高い。現状では鼻に掛かるブリッジ部分にテープの一端を巻き、他端を上方の額に貼って固定するなど工夫がされているが、汗や皮脂で長時間もたない、眼鏡の自重により次第にテープが剥がれてくる、途中で眼鏡の姿勢を直す際に不衛生になるなどの問題がある。そこで、固定(安定)機能を重視した次世代の医療従事者用眼鏡のデザイン提案が行われた。力学的・構造学的に適切な提案がなされ、また情報端末として医療行為中にリアルタイムで各種生体情報の表示や重ね合わせによるAR, MR用途も提示された。画期的な医療行為用スマート眼鏡デバイスの開発が期待される。

以上

平成26年度研究発表会・懇親会

第3支部では、平成27年3月21日(土・祝)、名古屋市立大学病院において、「日本デザイン学会第3支部平成26年度研究発表会・懇親会」を実施した。

企画目的

会員のデザイン活動や研究を相互に知り合い、懇親会を通してより深い相互交流を図るとともに、学会発表の練習機会とすることを目的とする。

実施内容

平成17年度から数えて、今回が10回目の開催となった。今年度は「医療デザイン研究センター」(名古屋市立大学病院中央部門)の見学会を実施し、センター長を務める國本支部長による案内、ならびに研究開発事例の紹介をしていただいた。

本年度は口頭発表17件、ポスター発表5件のエントリーがあり、会員10名、非会員8名、学生15名を合わせ33名が参加した。名古屋大学病院中央診療棟・病棟10階にある会議室2部屋を会場とし、口頭発表2セッションを同時に行った。今回は、オーガナイズドセッション「ヘルスケア&メディカルデザイン」を設け、5件の発表があった。また、口頭発表では大会と同様の発表時間とした。

一方、ポスター発表は、懇親会中では行わず、口頭発表のセッション終了後に行った。1件あたり5分程度のプレゼンテーションに続いて、活発な質疑応答が行われた。実機を持ち込んだ発表もあり、明るく活気があった。懇親会では、一昨年度より実施している「優秀発表賞」制度に基づいて、学生発表者から3名を選出,表彰した(口頭発表の2セッションから各1名、ポスター発表から1名)。

なお、各研究発表の概要は,「日本デザイン学会第3支部研究発表概要集(ISSN 2188-479X)」に収録され、参加者全員に配布された。

最後に,会場をご提供いただいた名古屋市立大学病院,ならびに,開催に向けご尽力下さった本支部幹事の諸先生と、名古屋市立大学芸術工学部、同大学院芸術工学研究科の学生に感謝申し上げる。

開催概要

  1. 日 時 2015年3月21日(土・祝) 11時〜18時45分
  2. 会 場 名古屋市立大学病院(名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1番地)
  3. 参加者 33名 : 会員10名,非会員8名,学生15名
  4. 発表数 22件 : 口頭発表17件(うちオーガナイズドセッション5件),ポスター発表5件

優秀発表賞受賞者

医療・看護領域における移動装置のデザイン設計要件に関する研究
鶴見慎吾 (名古屋市立大学)
小型・超軽量・高均斉度特性を持つ反射型タスクライトの提案
楠本真弘 (同志社大学)
Hassist 握力障がい者のためのロボットカトラリー
白江 文 (福井工業大学)

担当

國本桂史、加藤大香士、西尾浩一

平成26年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」報告

名 称
日本デザイン学会奨励賞第3支部
目 的
表彰制度による学生の研究・制作活動に対する評価
対 象
日本デザイン学会第3支部会員(教員)在籍の大学院、大学、短期大学において、 特に優秀な研究、制作を行った学生、大学院生
人 数
2名/各所属機関(大学、大学院を持つ機関は各1名)
方 法
各機関に所属するデザイン学会会員が選考し、推薦書を学生賞担当幹事に送付(必ずしも所属機関代表者や学科等の許諾をえる必要はない)
表 彰
第3支部から賞状データを送付し、各機関にて印刷して学位授与式にて授賞

受賞者:

福井工業大学大学院

病院における参加型アート&デザインの効果
畠中 勇樹(工学研究科社会システム工学専攻デザイン学コース)
推薦者:西尾浩一

福井工業大学

Whisk 水田初期除草ロボットモビリティ
塚田 健太郎(工学部デザイン学科プロダクトデザインコース)
推薦者:西尾浩一

名古屋学芸大学

Polygom
柿澤 佑輔(メディア造形学部 デザイン学科プロダクトデザインコース)
推薦者:黄ロビン
Sakura Shelter
尾方 美波(メディア造形学部 デザイン学科プロダクトデザインコース)
推薦者:黄ロビン

愛知産業大学

現代人のための安らぐ空間及びモノの研究・制作/「Petal」
木全 麻子(造形学部デザイン学科)
推薦者:佐藤延男・佐々木尚孝

金城学院大学

MANEKINEKO ~ラッキーゴッド
坂井 美咲(生活環境学部 環境デザイン学科)
推薦者:弓立順子

椙山女学園大学

心理評価と体圧分布を用いた複合クッション材の座り心地予測に関する研究
石井 彩華(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人
タルト専用包丁の研究
大島 佳奈(生活科学部 生活環境デザイン学科)
推薦者:滝本成人

長野大学

地域資源としての温泉と病院に関する研究
白 柳爛(企業情報学部 デザインコース)
推薦者:萬在勇
信州の文化を用いた粉末飲料「茶の実」の提案
滝沢 啓(企業情報学部 デザインコース)
推薦者:萬在勇

名古屋市立大学

医療・看護領域における移動装置のデザイン設計要件に関する研究
鶴見 慎吾(芸術工学研究科 博士前期課程)
推薦者:國本桂史
新しく使いやすい電気メスのデザイン設計要件に関する研究
野村 綾菜(芸術工学研究科 博士前期課程)
推薦者:國本桂史

以上

平成25年度「日本デザイン学会奨励賞第3支部」

日本デザイン学会第3支部では、支部会員のデザイン活動や研究活動の発表の場として、研究発表会、懇親会を開催し、会員間の交流を 促進して参りました。これまでの研究発表会においても、学生・大学院生によって将来性を感じさせる優秀な作品や研究成果が発表され、学生間の刺激や交流が 図られてきたと考えています。
昨年度より、日本デザイン学会の学生会員制度スタートといった状況を踏まえ、支部幹事会において、学生・大学院生のデザイン活動、研究活動の評価のための学生表彰制度と学生間交流の活発化を目的に とした学生会を順次スタートさせています。
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